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7月3日 神渡良平先生講演会 そして エピローグ

14:45 神渡先生が舞台上座よりご登壇されました。そして、会場を埋め尽くされた多くの神渡先生ファンの注目の中、静かに先生が語り始められました。

今回のテーマ「人間は宇宙の神秘の扉を開く鍵である」は、時を同じくして刊行されました『いのちを拝む』に収録されておりますいくつかの障がい者施設とそれに関わる人々の生きざまのお話の中の言葉です。今回の講演の中で編者の私が最も印象に残ったお話をご紹介します。

講演の口火は、NPO法人支援センターあんしんのお話でした。日本有数の豪雪地帯である長野県十日町でお生まれになられた樋口社長さんは、ご自身も左脚大腿部の骨髄炎が原因で左足の自由が効かない障害者だそうですが、そんなハンディキャップを背負いながら北越融雪株式会社という融雪システムを販売する会社を経営されていました。樋口さんの三女アッコちゃんは知的障がい者です。家族の中ではかわいい、大切なアッコちゃんですが障がい者ということで、様々な差別に逢われます。養護学校を卒業しても行く先がないとなった時、樋口さんは、「アッコを受け入れてくれる満足の行く施設がないならば、自分たちで始めよう」ということで、ご家族でNPO法人支援センターあんしんを立ち上げられます。アッコちゃんと同じように行き場を失った障がい者の受け入れを始めるとその温かい対応から徐々に入所者が増え始めました。アッコちゃんのお母さんの春代さんは常に「障がい者たちがいつでも重荷を下ろせる“母港”でありたい」と思いながら障がい者に接し、彼らの心の扉を開いてこられました。樋口家をあげての支援センターあんしんの挑戦は、これまでの障がい者支援センターでは無かった「真に障がい者が求めている、彼らが笑顔になるセンターでありたい」という思いから様々なユニークな試みを発案し、実現されてきました。

中でも私が最も感心したのは、高齢者と障がい者の共同生活の場「まごころの家」です。今の日本社会における二つの弱者、即ち、介護が必要な高齢者と障がい者を共同生活させるということなど誰が発想するでしょうか。障がい者は自分が人の世話をする立場になり、人様のお役に立つ立場に変わった時、目の輝きが変わり人生を前向きに歩み出したそうです。彼等は、宇宙から与えられた自分の命(めい・いのち)に気づいたのです。天地の間に、生を受けたすべての「生きとし生けるもの」には必ずかけがえのない自分という存在があるということに。

現在、わが国は高齢化が伸展し、介護の必要な高齢者だけでなく、独居老人の問題も抱えています。この試みは今後、日本の全ての福祉施設の社会の理想的なモデルとなるのではないでしょうか。

誰も障がい者に生まれたくて生まれてくるわけがありません。でも、社会は障がい者と健常者を大きく区別し、障がい者がその人生を全うできる生き方を真に助けてくれる施設はほんのわずかしかありません。障がいを持った人たちでも、自分に与えられた天からの使命に気づき、人のお役に立つと知れば、これまでの負の人生が、正の人生に変わり、自立の自信がついてきます。

非常に繊細な精神をもった、うつむき加減な障がい者の人たちに、無認可の小規模福祉施設「支援センターあんしん」の活動が、多くの障がい者に勇気と自信を与え、大輪の花をひらかせたのです。

 今、日本の社会はすさんでいます。みんなが気づいているように物質的には豊かになりましたが、精神的にはボロボロです。今、私たちに必要なのは自分の以外の一人ひとりの「いのち」の尊厳を大切にして、「あなたがいてくれてよかった」と気持ちで隣の人に接することではないでしょうか。特に、社会的弱者といわれている人たちを支え、互いに尊い「いのち」を尊重する機会を持つことで、私達のこころも改善していくと思います。

 今年の夏はいつになく「いのち」を感じています。テレビ、新聞で報道されるロシアーウクライナの戦争のこと、沖縄返還70年のこと、更に、ほぼ日常茶飯事化している親による子どもの虐待、そして死の報道。これまで見過ごし、聞き過ごしていたそれらの事件、事象を見聞するとき、昨日7月3日、神渡良平先生の1時30分弱のお話を思い出し、全国民が「いのち」について深く見つめなおす機会にしたいものです。

エピローグ

講演会の後、神渡先生を囲んで懇親のひと時を持たせていただきました。関西・中国各地よりいろんな思いを持って活動されている方たちに参加頂き、2時間という限られた時間ではありましたが、非常に内容の濃いひと時を過ごすことができました。意図して集まって頂いたわけでもありませんが、今日只今というこの場に、居合せた30名弱の人たち。それぞれが日々の活動で、「“沈黙の響き” 目には見えないけれども感じられるもの」の存在を知る人たちばかりです。その心の波動を感じる懇親会でした。各自のショートスピーチに身を乗り出して聞く姿在り、今、日本の国の置かれている現状のお話に真剣に聞き入る姿在り、笑いあり、涙ありの時間を通じて、ここにもまた大きな出会いの輪ができたと実感しました。

 昨年4月1日に開所させて頂いた令和人間塾は、「出会いの人間学」と「気づきの人間学」を大切にして活動しています。国民の教師と言われた森 信三先生の言葉にある「人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに。」を実感した一日でありました。

 尚、当塾の教室、事務所内は24時間紫外線・オゾン滅菌されおり、感染防止対策が完全に施されています。いつでも安心してご利用頂けますので、是非一度新たな出会いを求めてご来場ください。