この国を思う:小野田 治氏(元空将)による地政学特別講義
本年2月に端を発したロシア‐ウクライナ戦争は世界を大混乱に巻き込みながら一向に収束の兆しがみられません。このような状況下、我が国が置かれている現状を直視し、これまでの歴史と経験に基づき、未来、将来を如何に切り開いていくべきかを考えるのが地政学(地理的政治学)、の目的であります。この度、令和人間塾・人間学labの定例講座の一つである「時務講座 新聞を10倍楽しく読める地政学・中級篇」の特別講座として、元空将にしてハーバード大学シニアフェローでも在らせられる小野田治氏を特別講師としてお招きし、我々の身辺にせまる危機、具体的には米中関係と日本、台湾有事、現在のウクライナ問題などについて軍事専門家の立場からの現状分析と将来展望について語って頂きました。
講演の最初の部分で、米国国務長官のアンソニー・ブリンケン氏の言葉が紹介されました。「ロシアがウクライナ侵攻を止めれば戦争は終わるだろう、しかし、ウクライナが戦争を止めたら、ウクライナという国は亡くなるであろう」この言葉から会場にいた恐らく大半の人が、もし、今の日本が台湾有事から戦争に巻き込まれた場合を想定されたのではないでしょうか。「相手国(戦争を仕掛けてきた仮想敵国)が戦争を止めたら戦争は終わるだろう、しかし、我が国が先に戦争を止めたならば日本という国は地球上から永遠に消滅するであろう」ということです。今、日本の置かれている状況はこれに限りなく近い、危機的な状況にあるんだという事を、国民一人一人がきちんと認識しなければならない状況なんだということです。ある新聞社が、「日本が戦争に巻き込まれた場合、あなたはどうしますか」と問いました。「武器を取って戦う」と回答した人はたったの13%、「戦わないで逃げるという人」は47%、「わからない」という人が40%だったそうです。2030年には日本は我が国の一省と豪語する隣国は虎視眈々とそれを実行に移すチャンスを伺っています。
今年2月24日のロシアのウクライナ侵攻により始まったこの度のウクライナ戦争は、ロシアの思惑を遥かに超えて7か月にも及んでいます。これは殆どのウクライナ成人男性が最後まで戦うという強い意志をもってロシアに立ち向かっているからに外なりません。もはや、正義とは何か、国際平和、協調などという美辞麗句が通用しない世界情勢になっており、覇権国家のエゴによって全地球市民に禍が及ぶという時代なのだということ改めて認識させて頂きました。更に、日々、報道される台湾有事は、日本人にとってはもっと憂うべき問題であることです。何故なら、ご存じのように沖縄県与那国島は台湾に隣接しており、いつ隣家に火事が起こるかもしれない状況なのです。
講演後の質疑応答の中で、「日本の防衛力は実際のところどうなんですか」という質問が投げかけられました。それに対して、小野田先生は「日本の自衛隊は28万人、軍事費予算は5兆円です。之に対して中国軍人数、軍事は日本の5倍、10倍以上です。これに対抗する軍人、予算を準備することは不可能です。では、どうすればいいのか、まず、国民一人一人が国を守るという意識を持つという事だと思います。」ということです。「自分の家に、土足で他人が上がり込んできたら、貴方はどうしますか。」ということです。お茶の間のテレビで戦争を観ている私達も、自分ができるこの国を護る術、防衛についてこれからは真剣に考えることが必要なのです。
この他、ブログの紙面では伝えられない多くのことを小野田先生からお聞きしました。それらのことは先生の著書やYoutubeでも述べられていますので、是非、下記の著書、Youtubeをご参考になさってください。
尚、当塾では、毎月第一日曜日の朝10時から12時までの2時間、「時務講座 新聞を10倍楽しく読める地政学・中級篇」を開講しております。リモート参加も可能ですので、是非、そちらの方もご聴講ください。
現在購入できる小野田 治先生関連書籍:
1.『台湾有事と日本の安全保障』(幻冬舎新書)
2.『ウクライナ戦争徹底分析』(扶桑社)
3.『陸・海・空 軍人によるウクラナ侵攻分析』(ワニブック)
4. 『ウクライナ戦争と米中対立』(幻冬舎文庫)
また、YouTubeでも小野田先生の話を拝聴できます。(チャンネルくらら)
第6回「陸・海・空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」実際はどちらが優勢? 小川清史元陸将 伊藤俊幸元海将 小野田治元空将 桜林美佐【チャンネルくらら】 – Bing video
先週(9月26日から10月2日)開催された定例講座のご紹介
10月1日:安岡正篤先生全著作を読む『士学論講』第一講
大正13年に安岡正篤先生が海軍大学校で講義をされた「武士道哲学新論」(『士学論講』)の味読。第一講は、1.序説、2.鎌倉時代の精神的生活、
3.禅の武士道的精神についての3章を読了しました。
安岡正篤先生と日本海軍の縁、海軍大学校講義の際の幹事は当時、海軍大学校の教官であった山本五十六中佐(後の山本元帥)受講生は、井上成美少佐、宇垣纏大尉、高木健雄少佐、今村脩少佐ら50名弱。今後、生死の狭間に生きる軍人にとって、「いかに人物を練るか」、「死、永遠の今を愛する生き方とは何か」を問うた一年間の講義録が本書です。
10月1日 伊與田人間学を学ぶ 第二期 『中庸に学ぶ』第四講
(本講義は、9月25日リモート開催分のやり直し講義です)
伊與田覺先生の人物学を読み解く本講座は、第一期に『「人に長たる者」の人間学』を昨年一年をかけて読了し、今年の6月からは『中庸に学ぶ』(致知出版社版)を本テキストとして学んでいます。今回はその四講目、第二章の「誠を貫く」の後編でした。中庸の第二十章は『中庸』の中でも重要な章で貴重な教えが散りばめられています。講義の間で伊與田覺先生が話された「近江商人の実践教育」、「聖人と賢人」、「中江藤樹と大野了佐」、「天才南方熊楠」、「中庸の人中江藤樹」についても竹中理事長が伊與田先生から聞かれた記憶に基づき当時の模様が語られました。