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この国を思う:今、なぜ聖徳太子なのか

 去年、今年と聖徳太子没後1400年の記念イベントが各地各寺院で開催されています。高度に発達した現代文明、現代社会に対し、聖徳太子は何を伝えようとしているのでしょうか。そんなふとした疑問から、昨年の秋から再び聖徳太子の顕彰を始めることになりました。

 聖徳太子は我が国の歴史上に燦然と輝く一大人格であります。政治家として、外交官として、学者として太子の残した業績は他に類をみません。万巻の書を読み、それを実社会で実証してみせました。今日、徳治国家日本があるのも“日の出ずる国=日本”はかくあるべしと、国の成り立ち(『易経』天澤履の卦)に見る君臣一体の教え)を明確にし、国を永続的に維持、発展させる為に、“十七条の憲法“を太子が定めたことに拠ります。太子の定めた”十七条の憲法“を遵守すれば国の中は争いのない平和で安全な安心して過ごせる世の中になることでしょう。1400年前に示されたこの憲法は、太子が学んだ全ての叡智を織り込んだこの国を善い国に導く為の申し合わせ事項です。

 新型コロナウイルスによってもたらされた世界的なパンデミック(感染爆発)と今年勃発したウクライナ戦争は地球規模で人類に影響を及ぼしています。また、余り取りざたされませんが、地球温暖化による異常気象もより深刻な問題と化しています。本当に世紀末的状況が目前に迫っています。

 今、現代人は、地球市民は一堂に会して、襟を正してこの十七条を唱和すべき時だと思います。人間同士が共存共栄して生活するという日本建国の理念こそが世界を救う灯明となると思います。

 余り知られていませんが、聖徳太子の歌が万葉集(巻の三:国歌大観番号415)に収められています。

「家ならば 妹が手まかむ 草枕 旅に臥やせる この旅人あはれ」

 旅先で倒れた人を哀んで読まれた歌のようですが、争いの絶えなかった太子の生きた時代において、戦で倒れた兵士への哀悼の歌でもあったと思われます。縄文の太古から日本人は三十一文字で、心の働き、情感を表現してきました。日本人が日本人たる所以はこの“情緒”にあるのです。情の日本人の代表である太子の歌は日本のこころを伝える証であると思います。

 

◎先週(10月3日から10月9日)開催された定例講座のご紹介

10月5日:人物に学ぶ 人間力強化講座 本田龍祐氏(本田商店社長)

 吟醸酒“米のささやき”で名高い本田商店(商標:龍力)の8代目社長の本田龍祐氏をお招きして、酒造り新世紀と呼ばれる現代の日本酒造りについて、龍力の挑戦についてその思いを語っていただきました。酒造最適米といわれる山田錦を始め様々なお米をベースにして更に、土壌に関する研究を加え、顧客の好みを先読みした酒造りに果敢に挑戦されている姿に感服しました。また、酒造りという日本伝統産業にも働き方改革の波が押し寄せていることには少々驚きを感じました。そして、久しぶりに開催された懇親会では、当然のことながら“大吟醸米のささやき“を始め、本田氏自慢の新製品を味合わせて頂きました。

10月7日:安岡教学『照心講座』第七講 (三木英一先生)

 今回の講義の中心は「儒教と禅」でした。わが国に禅が本格的に導入されるのは鎌倉時代にでした。栄西、道元によってもたらされた臨済宗、曹洞宗といった坐禅は、自力本願を望む武士に受け入れられ日本で開花していきました。 

 特に、足利尊氏の師であった夢窓疎石は武士にとっての禅を広める役割を果たしました。講義の中では、三木英一先生が、夢窓疎石の漢詩「修学」を吟じられ、一同、大いに聞き入りました。

           「修学」夢窓疎石作

一日学問 千載 寶  (一日の学問 千載の寶)

百年 富貴一朝 塵  (百年の富貴 一朝の塵)

一書恩徳 勝 萬玉  (一書の恩徳 萬玉に勝る)

一言 教訓 重千金  (一言の教訓 重きこと千金)

◎良書紹介:BanCul 2022年秋号 「聖徳太子と播磨」

播磨地域にある聖徳太子所縁の寺院、太子町“斑鳩寺”と加古川市“鶴林寺”を中心に、播磨の地域に残された聖徳太子の足跡がまとめられた特集号です。

是非、ご一読ください。