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この国を思う:無名有力に生きる

 11月25日は先師伊與田覺先生の御命日です。今年は七回忌にあたりますので、NPO法人論語普及会が先生のご遺徳を偲んで『続 有源山話』を先日発刊されました。生涯、無名有力に生きられた先師の貴重な回想録です。

 この書は平成十一年(1999年)に発刊されました『有源山話』の続編にあたります。有源山とは伊與田覺先生の教学の中心であった成人教学研修所のあった処で前著ではその有源山での生活の回想録になっていました。今回の『続 有源山話』にはこれまで余り知られていなかった伊與田先生の学生時代から若かりし頃の話が多く集録されています。「日本一の小学校教員」を目指しその理想像を中江藤樹先生に求めての近江行で伊與田先生が見せられた藤樹神社の宮司様とのやりとりは興味深い話で普段は非常に温和な伊與田先生が、ここぞという時に見せられる「押しの強さ」が伺える逸話です。人間力を学び、人物たらんと欲する我々がその思いを達成できるか否かは結局するとこの「押しの強さ」を身に着けているかに拠るのではないでしょうか。大志を抱き、その実践躬行に日々努力し、信念として自分の腹に据えられないとこの「押しの強さ」は生まれてきません。

 『続 有源山話』はこのような珠玉の逸話に溢れた好著です。是非一読玩味してください。販売は当塾でもNPO法人論語普及会でも行っております。

11月11日:伊與田覺先生のみ教えに学ぶ 第11講(三木英一先生)

 「今月は伊與田覺先生の祥月命日にあたりますので先生の御遺影に対し合掌礼拝して講義を始めたく思います。」という三木先生のお言葉の後、参加者全員で合掌礼拝して講義に入りました。今回は、『致知』2010年10月号に掲載されました「『中庸』に学ぶ人間学」という特別講話の記事を本テキストとされての講義でした。副題にありますように、「至誠こそ人間を磨く道」という『中庸』の教えの眼目について学びました。その中に、伊與田先先生に大きな影響を与えられた長澤準平先生、蓮沼門三先生、松下幸之助氏の逸話も登場し、伊與田先生の人間学が如何にして形成されていったのかを伺い知る事ができました。伊與田先生というと『論語』を連想される方が多いと思いますが、先生の生涯の集大成は『中庸』にあると思います。

   “音もなく そっと散りゆく 楷の葉か” (伊與田 覺先生辞世)