この国を思う:関東大震災から100年 防災の日に思うこと
我が国は自他共に認める自然災害大国です。ユーラシア大陸の東端に位置する日本列島は縄文の時代から自然の脅威に蹂躙され続けてきました。その被災の経験から日本民族の絆が形成されてきたことは周知の事実であります。私たちは一生の内に少なくても5,6回は地震を体験し、見聞します。それぐらい日本人は地震ときっても切れない生活をしているのです。
今年は関東大震災から100年ということで、某テレビ局でもスペシャル番組が放映されました。その記録映像を見て、その時代から見て大いに発展した文明文化の現代に於いて同規模の地震が首都、大都市に起こったら何がおこるでしょうか。100年前の大正12年は、明治維新後、近代日本建設が始まってから57年が立ち、日清・日露戦争、第一次世界大戦を経て、アジア唯一世界の強国に肩を並べるようになって国全体に緩み、驕り高ぶりがみられた日本国に対し、天が鉄槌を下したと思われるような惨事であったと当時被災されたわが師安岡正篤先生も述懐されています。
私たちの祖先は、地震、台風などの自然災害に見舞われて生活の全てを失うと天を怨むでもなく、こつこつと一歩ずつ生活を再建してきたのであります。その中で生まれてきた協調精神が日本民族のDNAとして刻まれてきました。
更に、この未曾有の大惨事に際し、11月10日に天皇陛下は「国民精神作興に関する詔書」を発せられ、国民精神の振興と国家の興隆を呼びかけられました。当時は三つの戦争の後の経済繁栄を背景に社会全体に怠惰的、享楽的風潮が広がり、また、社会労働運動の活発化により国内全体に動揺が見られた為、民意の引き締め、国民の教化を図られたのであります。
もし、現在の日本に首都、大都市直下の地震が興ったら、私たちは国民精神を発揮することができるでしょうか。「今だけ、金だけ、自分だけ」が当たり前になっている今の日本人に国は支えられるでしょうか。国を思う国士たる私たちが益々奮起せねばならないことは確かです。
令和5年8月28日から9月3日の間に実施された定例講座は以下の通りです。
▼9月2日:安岡正篤先生全著作に学ぶ 第26講『東洋政治哲学』第二講
(竹中栄二先生)
安岡先生初期四部作の第三巻『東洋政治哲学』の第二回目は、「政治の本質」、「政治の消長因革」、「政治と人物」の章を味読しました。「政治の本質」、「政治の消長因革」では、東洋社会に特徴的な政治の在り方を東洋古典を研究しつくした安岡先生ならではの視点で説かれた政治論になっています。「政治と人物」では、古今東西の政治哲学を振り返り、東洋哲学との差を違を明確に説明されています。今回の三章を読むと、我が国の政治哲学が理想的な「王道政治」を実現させたものであることが良く分かります。
▼9月3日 新聞を10倍楽しく読むための地政学 中級篇 (竹原俊三先生)
前回のテーマの補講的な位置づけて「電力問題」について最初に触れられた後、今回は岩永憲治氏の近著『金融暴落!グレートリセットに備えよ』を耽読いたしました。いよいよ正念場を迎えた世界経済の状況を、『金融暴落!グレートリセットに備えよ』と直近の新聞記事を元に解説して頂きました。今日の世界経済を牛耳るアメリカ、中国の二代大国の抱える経済的な問題をどのように読み解くか、日本は如何に立ち振る舞うべきなのか、竹原先生の持論をうかがいました。