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この国を思う:体育の日に思う 日本人の健康事情

昭和39年10月10日、晴天の秋空の元、東京オリンピックがアジアで初めて開催されました。爾来、10月10日は「体育の日」と制定され、国民がスポーツに勤しむ日となりました。それから60年が経ちテレビで放映されるスポーツ番組を観るたびにいつの間に日本はこんなに強くなったの?と思われるような状況が続いています。日本人の体躯も確かに向上し、今日日本は、世界一の長寿国と呼ばれ、平均寿命84.3歳は世界一位でちょっと見は健康的で豊かな国に映ることでしょう。しかし、今日、それを手離しで喜んでいいのだろうかと思わせることが起ってきています。中でも決して見落としてはいけないのが、日本の人口構成の変化、食の崩壊と食物アレルギーの増加、精神異常を訴える人の増加です。

日本の人口は昭和の時代は釣鐘型の人口構成となっていましたが、平成、令和と進む中で、現在はつぼ型になっており、15歳未満の人口が少なくなっています。更に、出生率も低下の一途で改善の兆しは見られません。所謂、少子高齢化の現象です。政府は少子化担当大臣まで設置してこの問題に対処しようとしていますが、もっと、国民一人一人が人口問題に対する危機観を持たない限り、幾ら経済的な支援を繰返しても大した改善は期待できないと思われます。これは国力、国勢を左右する労働人口(どの産業も労働力不足)の安定確保とも密接に関係しているだけにもっと長期的視点でみる必要があります。

次に今日の日本の重要な問題は15歳以下の弱年層で発症する食物アレルギーの問題です。多様性では世界に類を見ない位豊かな日本の食ですが、子ども達の食物アレルギー率が2%近くになっており、なんと乳幼児に至っては10%にも達しています。子供の時にアレルギー体質になると、生涯免疫系疾患の脅威に晒されることになることを父母は真摯に考え、「食育」を取り組まねばなりません。日本が健康大国である所以は伝統的な健康食にあることを知り、日本人にあった食を見直す必要があります。

三番目は、年々増加する精神疾患者の問題です。これも大学生以下の若年者で深刻な問題です。一昔前は「登校拒否」といいましたが、最近では「ひきこもり」という言葉が用いられ、働き盛りの壮年期の人々でも見られます。これは非常に重篤な社会現象だと思います。今の日本は世界有数の自殺者国です。特に、小中学生の自殺は年間400人を超えてダントツ世界一です。戦後、豊かさを求めて頑張ってきた日本人が豊かさの代償として払ったのは日本精神の喪失だったのです。自己崩壊、融解し始めた日本及び日本人をどうやって救えばいいのでしょうか。キーワードは、教育と農(食)であると確信しています。現代日本の三つの病根に対して、私たちは思考の三原則に基づいて、長期的、多面的、根本的にこの大問題に取り組んで行かねばなりません。

令和5年9月25日から10月1日の間に開催しました定例講座は以下の通りです。

▼10月7日 安岡正篤先生全著作を読む:(竹中栄二先生)

昭和7年に刊行された『東洋政治哲学』は、日本農士学校生に農士である前に国士の風を養ってほしいという願いを込めて「王道政治の原理」を説かれた書です。今回はその中での、安岡先生の真骨頂ともいうべき「興亡の鉄則」、「文化と素朴」の章を耽読しました。「政治は永遠なる民生の自律的活動である。故に為政者―民衆の指導者たる者は眼前の局部的利害得失に惑わず、能く大局に通じて、民衆の永福を図らねばならない。」とあります。時代は変わっても、政治家、官僚として世の指導者、牽引車たる人間はそれだけの覚悟と自覚をもってその任を全うしなければならないということでした。