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この国を思う: 文明の滅ぶを救うもの

 我が国の気象観測史上、二番目の猛暑となった夏も此処にきて漸く和らぎはじめました。稲穂も今のところ順調に育ち刈入れのタイミングを待っています。

収穫の秋、誰もがもっとも好きな食欲の秋、豊穣の秋がそこまで来ています。そんな時に私の頭をよぎるのが日本の農業のこれからです。

 最近では「6次産業という言葉が登場し、農林水産業などの一次産業に素材の加工から流通・販売までを行う新しい業態が注目されています。そんな今、是非読んで頂きたい一文があります。

 「近代文明の将来を思う時、次代を担う青年が活眼を開いて覚悟せねばならぬ大問題があります。それは都市と農村との関係です。」近代文明の運命に関しては西洋の識者も声を大にして警告しています。

 まず、「文明が自然を粗末にした」ということです。産業革命以来白色人種は機械文明・物質文明を次第々々に発達せしめることに依って、「自然を征服する」と称して、過去の人類は自然より圧迫されて、猛獣毒蛇の害を受けたり気候風土に悩んで来たが、その自然を歩一歩征服して、人類にとって便利で幸福な天地を人類の力に依って打開して行くことが出来るということに非常な興味と誇りとを持ちました。自然の征服といふ観念ほど白人近代文明にふさわしい言葉はない。」(安岡正篤著『祖国と青年』近代文明と都市・農村)

 ここに登場する西洋の識者とは、『西洋の没落』を著したシュペングラーやドイツの文明史家のリールでありますが、彼らの言を引いて安岡正篤先生は明治・大正期に近代化に成功した日本が次に考えるべき課題として「教育と農業」を挙げられました。そして、昭和2年には東京白山御殿場町に金鶏学院を設立し、国士の育成に取り組み始められました。ついで、昭和6年には日本農士学校を設立され、農士(篤農家)の育成に着手されました。今から100年前の事です。

 この100年で日本教育、農業がどれだけ進歩、発展したでしょうか。皆さんも感じられているように、進歩、発展どころか後退、頽廃しているのが現状です。

 『祖国と青年』の第一章の「近代文明と都市・農村」では、前の一文に続き、第二の問題として近代都市世界的都市というものの発達とそれに伴う農村の荒廃を、第三の問題として人口の減少と人間の退化を、第四の問題として有色人種の自然的発展と白色人種の衰退について記されていますが、今日只今、我々が将にこの四つの課題に直面し、瀕死の状態にあるのではないでしょうか。

 明治維新から150年で、我が祖国日本は世界で成功し、繁栄した国になりましたが、今、「繁栄の中の没落」という状態にあります。残念ながら安岡先生が警鐘を鳴らし続けられたにも関わらず、口に手を当てて憂えているのが実情です。国としての食糧自給率が38パーセントという危機的状態にあっても気づかすに、食糧ロスを繰り返しています。

 令和人間塾・人間学lab.活動も2年目を迎え、愈々、「教育と農業」による日本の再興を目指して、「農業」への取り組みを始めたいと思います。私どもが拠点を置く姫路市(人口50万人超の都市)の北部(北播磨、奥播磨地域)にはまだ農村が残っています。過疎の限界集落と呼ばれるくらい高齢化が進み後継者不足に悩む地域ですが、そこには「日本人の心の原風景」が残っています。そのひとつ姫路市安富町関集落、通称かかしの里では、今月9月25日に「おくはりま倶楽部」というかかしの里のファンクラブを設立し、地域創成に取り組みはじめます。私もこの活動に共感し、設立時メンバーとして携わるつもりです。

私はこの過疎の限界集落で村の人々と日本及び日本人が本来の生活を取り戻し、自然と共生して生きるということを実現したく考えています。この実証実験こそが、当塾の目指す「人間学lab」であります。学んで、行動に起し、失敗し、気づいて、正して成長する、そういう人間を造る場にしたいのです。

 最後に、「おくはりま倶楽部」にご興味のある方は、是非、一度安富町関に足を延ばしてください。11月13日は、年に一度の大イベント「ふるさと体験・交流フェア」も開催されます。(ダウンロード用PDF有り)